高橋浩由の「スポーツ素敵に隠し味」

2020年3月 4日(水)

「無観客」の静寂と喧騒


私は「無観客試合」を経験したことがある。

 

静かに球場入りし、

 

静かなロッカーでユニフォームに着替え、

 

スパイクのひもを結び、

 

キャッチャーミットを抱え、

 

薄暗い通路を通りぬけてグラウンドに出る。

 

目に飛び込んできたのは、誰もいないスタンド―

 

そして、スコアボードには、こう刻まれていた。

 


【あいテレビ vs テレビ高知】(^^)/


 

野球王国の聖地、「坊っちゃんスタジアム」で行われた

JNN系列 中四国地区屈指の好カードだ。

 

私たちは黒字に白の縦じまという

まるでかつての「たけし軍」のような珍しいユニフォームに身を包み、

胸に躍る「パラダイス」の名のもとに勝利を目指した。

 

攻撃ではバッターに「狙っていけ~」と鼻息も荒く発破をかけ、

守備では、ピッチャーを「ドンマイドンマイ!」と励ますなど、

誰彼ともなく、休みなく送られる声援は、

無人の乾いたスタンドに、銀屋根に、とても心地よく響き渡っていた。

 

そんなことを思い出していたのは先週の日曜日、

インターネット放送で「無観客」で行われたプロ野球のオープン戦を見ていた時だ。

 

「カコーン」「カシッ」「クワッ」「スコーン」

乾いた打球音がこれでもかとドーム内に響き渡る。

 

あ~なんという快音!

 

「バシッ」「ビシッ」「パシーン」「スタッ」

白球とグラブの衝突が生み出す皮の摩擦音が

巧みの技を一層引き立てている。

 

あ~なんという心地よさ!

 

そして、ヒットになり、アウトになり、オーバーフェンスが飛び出せば

あちこちから一斉に湧き上がる「地鳴り」のような選手たちの叫び声―

 

あ~なんということよ。

プロでもこれほどまでに声を出していたのか!

 

生活をかけ、家族を背負い、しのぎを削っているグラウンドで

選手たちの口から思わず飛び出す心の叫び・・・

 

あ~なんと生活感満載なんだろう。

美しく生臭い人間の営みよ。

 

「無観客試合」が、図らずしてあぶり出してくれた

プロ野球の新たな魅力、そして価値―

 

 

そして"センバツ"だ。


「無観客開催」か「中止」か―


20180805_062450.jpg

(阪神甲子園駅前にて)


 

きょう運営委員会の長い話し合いの末に

日本高野連の八田英二会長が、

午後6時14分30秒に発した答えは

 

「無観客試合で準備を進めてもらう」

 

ただ、依然中止の判断も含め、開催有無の結論は、

1週間後の「3・11」に持ち越された。

 

20200305_003537.jpg

(甲子園球場1塁側アルプスより)


楽しみ方はいくらでもある。

 

ただ、"センバツ"は高校生の部活動だ。

議論は違う次元で行われている。

 

ちなみに野球以外の高校スポーツ界で

同時期に行われる「全国高校選抜大会」。

こちらでは高体連管轄の競技だけでも

柔道や弓道、なぎなたなど5つの武道や

卓球、ソフトテニス、ハンドボール、ラグビーなど

5つの球技を含め、すでに「20」の競技で大会の中止が決まっている。

 

 

それでも野球だけは特別なのか―

 

「1995年」も「2011年」も開催されたセンバツ。

 

国民に届けるのは、今回も「勇気」と「感動」だけならばいいのだが。


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