秋にサクラが咲いた「2019」
日本の歴史的快進撃で空前の盛り上がりを見せているラグビーワールドカップ。
「3連覇はノルマ」と豪語するニュージーランドを筆頭に、
オーストラリア、南アフリカ、イングランドなど強豪国が
初のアジア開催、日本大会でひと暴れしようと手ぐすねを引いています。
(東京スタジアム ニュージーランドvsナミビア 5万の観衆、試合前の静寂)
こうした中、アイルランドに屈辱の「ボーナスポイント狙い」のキックを蹴らせ、
スコットランドに感情任せのラフプレーを誘発させ、
決勝トーナメントへ、どっしりと真っ直ぐに突き進んでいった日本。
想像しうる全てのメニューをこなし鍛え抜かれた頭脳と、
そこから発せられるパルスに瞬時に反応する鋼の筋肉を支えに
予選プール4連勝という想像を超える結果で目標だった8強入りを果たしました。
こんな日が訪れるとは正直思っていませんでした。
「リーチのオフロードパス、すげ~!」
「姫野のジャッカル、半端ね~!」
そんな言葉を、街で、電車の中で、普通に耳にする日が来るとは・・・。
(ニュージーランド 「ハカ」 突き刺さるマオリ族の雄叫び、包み込む大歓声)
私が高校ラグビー県予選決勝戦を初めて実況したのが1996年。
ただこの頃、日本のラグビー界は、前年の第3回ワールドカップの後遺症に苦しんでいました。
日本 17-145 オーストラリア
完膚なきまでに叩きのめされた歴史的大敗。
世界ははるか彼方にあり、同じ競技とは思えぬほどそこに至る道さえ見えませんでした。
そしてラグビー人気も下降線をたどり、
花園の全国高校ラグビー大会では、ビッグスポンサーも撤退しました。
あれからまもなく四半世紀―
よくぞここまで来たことか!
大学ラグビーと社会人ラグビーが、冬の風物詩的な色合いも含めて人気を博した時代を経て、
2003年から「トップリーグ」がスタート。
ラグビーのプロ化で試合数は増え、レベルも急上昇していくと、
世界のトップ選手が日本でプレーし始め、世界の平均値が徐々に日常に落とし込まれていきました。
そして、2009年7月28日、「第9回ラグビーワールドカップ」の開催地が日本に決定。
10年後のホイッスルに向かって、強化策も第2エンジンが始動します。
すると2015年には "ブライトンの奇跡"
ワールドカップの舞台で日本が南アフリカを破る大金星をあげ、国内のラグビー熱は沸点に到達。
2016年からは、南半球強豪3か国が中心の「スーパーラグビー」に日本の「サンウルブズ」が参戦。
日本が世界ランキングトップ10の「ティア1」と肩を並べ、乗り越えるためには、
どこを伸ばし何を補えばいいのか、
骨きしむタックルを受けながら脳裏に刻みこんだ試行錯誤のデータは
気の遠くなるような長期強化合宿を通じて着実に「勇敢な桜」の血となり、肉となっていきました。
2019年9月20日、ラグビーワールドカップ日本大会が開幕。
そして日本は世界を飲み込み、
秋に「サクラ」が咲かせました。
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