「2塁3塁」 と 「1塁3塁」
「あれは個人の判断ですね」
試合後、松山商業の重澤和史監督は
そう静かに振り返った。
(校歌 松商ナインと応援団) 今治球場の1回戦、第1試合。
1回戦屈指のカードと目された
今治北 対 松山商業。
中盤までの主役は今治北のエース武田。
右スリークオーターから繰り出す球威あるストレートと
ブレーキの効いたスライダーで
7回まで松商打線に与えたヒットはわずか「1」。
一方の今治北はそのピッチャー武田の
タイムリー2ベースなどで2対0とリードしていた。
結局、ラスト2イニングスで松商が3点取って
勝利するのだが、
冒頭のコメントは、8回表の攻撃について。
先頭、1番左の西森がレフト前ヒット。
そして2番左の平岡。
うまく流してレフト前へ連続ヒット。
俊足の西森は一気に3塁へ。
これでノーアウト1塁3塁でクリーンアップへ...と思われた瞬間、
バッターランナーの平岡は送球間を突いて2塁を陥れた。
結果は「ナイスラン!」
ただ、気持ちが先行した走塁だったようにも見えた・・・
2点ビハインドの状況で
「ノーアウト1塁3塁」と「ノーアウト2塁3塁」では全く意味が違う。
「2塁3塁」ならば、1ヒットで一気に同点。
犠牲フライでも1点入って1アウト2塁。
次ぎのヒットで同点もありうる。
しかし「1塁3塁」では
犠牲フライで1点入っても1アウト1塁。
同点へもう2作業が必要になるだろう。
ただ、3番高木は
前の打席でレフトへヒットを放っている。
しかも終盤8回・・・。
結局、松山商業はノーアウト2塁3塁から
3番高木がライトへ犠牲フライで1点返し1アウト3塁。
そして押せ押せムードの中、
4番堀田がライトオーバーの
タイムリー2ベースヒットを放ち同点。
最終回に1点勝ち越し3対2。
最後は逃げ切って初戦を突破した。
「セオリー」と「不確定要素」
その狭間での格闘が高校野球最大の魅力であることは間違いない。
それを踏まえた上で、
「あれは、止まれだと思いますね」
重澤監督は振り返る。
苦笑いしながら―
球史に残る15年前の「奇跡のバックホーム」。
3塁ランナーのタッチアップに対し、
「ノーバウンド」のバックホームを誰が予想したことか。
ただ、「監督とはなにか」
そして「高校野球とはなにか」
選手と監督の関係も例外なく時代を反映する。
ストレートに言えば「監督の指導」と「選手の意見」が
現代高校野球を形作っているのが現実。
昔の野球に「後者」は無い。
「行けっ」
「止まれ」
その一瞬に今の時代を垣間見ると同時に、
過ぎ去った時も意外に多いことに気づかされる。
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