バルバリッチの言葉
「未来の事を口にするのはリスキーだ。
しかしそれが
今はエネルギーになっているし、
やれる自信もある」
愛媛FC バルバリッチ監督 2009年12月
2010年の目標を尋ねた時のバルバリッチ監督。
来日3ヶ月目の指揮官は
言葉を選びつつ慎重に、しかし胸に秘めた信念を口にしてくれた。
クロアチア出身で旧ユーゴ代表、あのオシム監督の教え子でもある。
「言葉」が宙をさまようことはない。
多民族国家ゆえに古代から内戦、紛争が続いてきたバルカン半島。
トルコ、ギリシア、アルバニア、ブルガリア、
さらに旧ユーゴスラビアの
マケドニア、セルビア、モンテネグロ、クロアチア、
そしてボスニア・ヘルツェゴビナ・・・。
92年に勃発したボスニア紛争が終結したのは95年とついこの前。
紛争の末に独立を宣言したコソボを巡っては
未だ国際的にも不安定な状況だ。
そんな状況で日々と向き合う中、
大切なのは「その日」「その時」「その瞬間」。
その積み重ねが「あす」になるのだろう。
刻一刻と変わっていく社会情勢の中で、自分はどう動くべきなのか。
愛する者たちを守るためにはどうすればいいのか。
「根拠なき希望」は時間の浪費なのかもしれない。
フットボールも同じか。
「今」の積み重ねが「あす」の前進につながり、
それがいつしか「劇的な変化」を生む。
バルバリッチ監督はそれを知る。
(空 希望の宿る場所)
来日直後、中盤でボールを簡単に奪われる様子に
バルバリッチ監督は
「戦うために最も大切なことがおろそかになっている」と指摘した。
「武士」に興味があるという。
全く初めて訪れた国、極東の「日本」。
これまでの人生で接点はほぼ皆無に等しい。
ただ「戦い」に臨む「武士」の姿勢はバルバリッチの心を捉えていた。
「侍スピリッツ」に触れることを楽しみにバルバリッチは来日した。
それが失望に変わったかどうかは定かではない。
しかしフットボールがその国を映し出す鏡であるならば
この国の若者たちを束ねるのは
容易でないことくらいは察知しただろう。
(心をひとつに 愛媛FCイレブン 写真左から2番目がバルバリッチ監督)
「サッカーはサポーターのためにやっているものだ」
バルバリッチ監督はこう言い切る。
「私たちが勝利で得る喜びよりも、
サポーターが喜ぶことで得られる喜びの方がはるかに大きい」
そのサポーターに「借りを作った」と何度も語ったバルバリッチ監督。
シーズン終了後、冬の夕方ピッチ上にて30分間のインタビュー。
しかし2010シーズンを見つめるその表情は
西日のせいか晴れやかに見えた。
「戦う」とは何か―
2010年
オシムの教え子が、
愛媛でいよいよ刀を抜く―
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