高橋浩由の「スポーツ素敵に隠し味」

2009年7月30日(木)

「打」か、それとも「投」か

「初球」だった。

 

「BMW」に向かって放物線を描くその「打球」。

ライトライン際の上空を右にも左にもそれることなく

ライトフェンスの「BMWの広告」に向かって真っ直ぐに飛んでいった。

 

秋山拓巳。

 

決勝戦の第1打席のことだ。

 

きのうの準決勝で「3打席連続」の敬遠で歩かされた秋山。

 そして一夜明け、第1打席の初球、その才能は解き放たれた。

 

 

s-決勝戦.jpg

(愛媛の高校野球ファンは歴史に酔う)

 

決勝戦。

ジャンケンで勝って「後攻」を選んだのは対戦相手の済美。

当然だろう。

準決勝の逆転スリーランホームランで

今年も「上甲マジック」健在ぶりをアピールし、

後半の粘りには絶対の自信を手にしていた。

 

「守り」から・・・いや、「秋山のピッチング」から流れを作り

攻撃に移りたかった西条は、

早くも名将の揺さぶりに遭っていた。

 

そんな中、2アウト1塁の場面で

左バッターボックスには「4番秋山」。

 

済美は、鈴木―喜井の2年生バッテリー。

初球、キャッチャー喜井は先に左足を動かした。

 

まずは「アウトコース低め」のストレートで様子を見よう・・・

 

しかし1球目。

主砲を前に、鈴木の初球は「逆球」になった。

喜井の構えたミットからはるか右寄り上方へ・・・つまり「インハイ」。

ボールは秋山の胸元を襲い、差し込まれたように見えた。

ところが・・・

 

次の瞬間、秋山の体は鋭く回転。

その動きに合わせながら

バットのヘッドは最短コースの周回軌道を通過した。

 

「ガキッ」

 

快音とは言い難い、なにか堅い物同士がぶつかり合うような打球音。

つまり「詰まった打球」だった。

そして詰まった分、ボールは右に切れなかった。

 

だが、問題はその「飛距離」だ。

 

済美のライト梶本は、すぐに「背番号9」を

こちら側に向けることになった。

打球はあっという間にフェンスに達し、

秋山は「快足」を飛ばして3塁に達した。

 

この先制パンチで勢いに乗った西条は一気に頂点を極めた。

 

これが秋山の「打」だ。

 

 

そして「投」の秋山。

 

中2日の登板ではあった。高校野球の世界では「休養十分」といえよう。

だが、決勝戦終了後のお立ち台で秋山は吐露した。

 

「疲れていたので・・・」

 

なにしろ140キロ台を投げ続けているのだ。

並のピッチャーとは疲労度も違うのだろう。

 

しかし1回ウラ、済美の先頭浅岡を迎え、

初球は140キロのストライク。

 

この後、139キロ、140キロとスコアボードに刻むと

カウント2-1からの4球目。

 

147キロ―。

 

ここは済美の1番・浅岡もファウルに逃げるが、

続く5球目、

124キロのスライダーにタイミングが合うことはなかった。

 

この完璧な制球力を、

秋山は決勝戦の1人目のバッターから披露するのだからたまらない。

 

そして、2時間後―

 

終盤8回、秋山の前には済美のクリーンアップ。

しかし3番、4番の左バッター2人を簡単に内野ゴロで2アウト。

そして5番喜井に対し、カウント2-2からの5球目。

 

スコアボードには「145キロ」が表示され、

喜井のバットは空を切った。

 

「フォーム」で投げている秋山。

球速は全く衰えず、変化球の制球力も変化なし。

 

まるで「金太郎飴投法」だ。

 

 

結局、今大会秋山は

33回1/3を投げ、三振「38」。

 

「140キロ」のボールをファウルさせておいて、

「145キロ」のストレートか、

「124キロ」のスライダーか。

 

相手バッターに求められるレベルは低くない。

 

プロ10球団16人のスカウト陣が熱視線を注いだ

準々決勝の帝京第五戦。

 

秋山は7回を4安打10三振で1失点に抑え、

スカウトのスピードガンに「150」を刻み度肝を抜いた。

 

新聞報道によれば、中日のスカウト部長が

 

「投手としての評価も高いが、

バットの出がスムーズで長距離打者の資質もある」と口にしたという。

 

「打」で行くのか。

 

「投」で行くのか。

 

 

さあ、秋山の舞台は甲子園に移る。

 

敵は「真夏の太陽」だけかもしれない。

 

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夏の高校野球愛媛大会 決勝 坊っちゃんスタジアム

 

西 条 13-2 済 美

  (17年ぶり6回目)

 

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