高橋浩由の「スポーツ素敵に隠し味」

2022年3月11日(金)

センバツ出場「大島」・・・に追いつけ追い越せ「徳之島高校野球部」

急な坂道を登り切ったサトウキビ畑の向こうに その「グラウンド」はあった。

九州と沖縄本島の間、 鹿児島県の離島、徳之島。今年1月、マラソン日本最速ランナー 鈴木健吾選手の取材のため強化合宿中の徳之島を訪れた。

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(徳之島)

合宿の拠点は島の北部、天城町で、そこには、シドニー五輪女子マラソン金メダルの 高橋尚子選手が強化練習に励んでいた「尚子ロード」があり、南国の気候と観光地化していない環境から実業団ランナー達の聖地となっている。

初日の取材を終えて向かった宿泊先は 島の反対側の徳之島町。島の人口約2万2000人の内、 半数の約1万人がこの徳之島町で暮らしている。

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初めての徳之島。 夕方、散歩に出た。東シナ海を背にして町の中心部へ続く上り坂をたどってみる。すると上り坂の向こうに学校が見えた。楽器の音に導かれて正門前に着くと「全国高等学校空手道選抜大会34年連続出場!」と約10mの横断幕が誇らしげに掲げられている。

そしてベージュと茶色の落ち着いた雰囲気の校舎の壁には「鹿児島県立 徳之島高等学校」。

空手の強豪校・・・か。

徳之島0.jpg

(徳之島高校)

部活の時間だし、グラウンドを見たい。 この習性はもう治らないと思う。耳を澄ますと、遠くから大声が聞こえてくる。しかし正門からはグラウンドが見えない。声は、常時叫ばれてはいない。 不定期に、しかしいくつかの声が重なっている。サッカーか?野球か? よし、横から回り込んでみよう。

正面に向かって左側、一度学校から離れて回り込む道を探しながら上り坂を歩いてみた。

歩いてみたが、住宅地となり、 学校に近づいて裏道に入れば、行き止まりだった。

仕方なく元の上り坂に戻り、もっと先の回り込む道を探した。

坂がきつくなってきた。

「こりゃ激坂だ」 さっそくアプリで計測すると「15%」はある。ロードバイクの「ヒルクライマー」として、この習性も治らない。

徳之島④.jpg

(激坂を上っていくと・・・)

てっぺんまで行ってみるか・・・ 頂上付近で視界が開けた。

すると、見えた、「野球部」だ。 グラウンドだ。広いぞ。

その丘の上のサトウキビ畑の先には 野球場1面がのびのびと広がっていた。

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(徳之島高校の野球場)

立派な球場じゃないか・・・今自分が立っているのはセンター後方のスタンドの位置にあたる。奥に見える「内野」は土で、手前の「外野」は天然芝。この時、ライトの位置にいるノッカーの打球を、 部員たちが左中間付近で順に受けている。

気持ちよさそうだな~ 野球部員は15人ほどか。

奥の「内野」では マウンドにいるピッチャーがくるっと振り向き、セカンドに投げた。 牽制球の練習だ。 1人、長身の左投げがいる。帽子が黒だ。 セカンド付近にいるのは白い帽子 ということは、彼がエースかな?

その向こうのバックネット下部にはグリーンのカバーがあり

「TOKKO PRIDE」の文字。

プライド.jpg

とっこう? そうか「徳之島高校」略して「とっこう」だ。

それにしてもグラウンド、貸し切りじゃないか・・・ というか学校のグラウンドだから当たり前だが、 ここで毎日練習できるなんてうらやましい限りだ。グラウンドの向こうには東シナ海の大海原が広がっている。 私は高校生じゃないが、とにかくうらやましい。

そうこうしていると 1人の女性が車から降りてきた。 部員の保護者のようで、ちょっと声をかけてみた。

「いい所でしょう?」「素晴らしいですね」 「みんな毎日、一生懸命練習してますよ」

そこへユニフォーム姿の大柄な男性が歩み寄ってきた。

「通りすがりの者ですが」と言いながらも身分を伝えご挨拶させていただくと 「監督の吉田です」と笑顔を返してくださった。

徳之島高校野球部 吉田公一監督。

ズバリ、とてもエネルギッシュで、 これぞ高校野球の監督という快活さをたたえた方で 島の高校という地理的なハンディなど 軽く乗り越えてしまうような勢いと温かさを感じる。 生徒がうらやましい限りだ。 私は高校球児ではないが、とにかく部員たちがうらやましい。

そしてこの3日後、春のセンバツの出場校が発表された。 全国の32校に吉報が届く中、 鹿児島県の「離島の高校」にも一足早く春が訪れた。

「大島高校」

なんと徳之島高校から海を挟んで隣の「奄美大島」の野球部だ。 去年秋の鹿児島県予選で初優勝を果たし、 九州地区大会で準優勝。 文句なしの内容で8年ぶりのセンバツ切符を掴んだ。

その様子に最も刺激を受けたであろう隣の島の「徳高野球部」が 1月下旬の練習から気合いの入った声を響かせていたのも納得だ。

「実は今、マラソン日本歴代最速ランナーが 島の向こう側で合宿していて、 愛媛出身の選手なので、取材に来たんですよ」 「ああ、あの『びわ湖』の人?」と吉田監督。

やはり「世界自然遺産」の徳之島。 みなさん、世界と戦う人に敏感だ。

徳高野球部、いつかあらためて取材させていただきます!

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