高橋浩由の「スポーツ素敵に隠し味」

2020年9月28日(月)

午後9時の芝生広場

この芝生広場は、午後9時ごろから子供たちで賑わい始める。

サッカーだ。

男子も女子も嬉々としてボールを追いかけ、パスをかわす。

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ここはニンジニアスタジアムの目の前。

愛媛FCの試合が終われば、今度は彼らの出番だ。

気分はすっかりプロ選手。

夜空の元、スタジアムの照明に浮かび上がる鮮やかな芝生広場は

家路につく前、ささやかな夢を膨らませるにはこれ以上ない空間となる。

この日、愛媛FCは引き分けに持ち込み、勝ち点1を獲得。

しかし5試合連続無得点で「最下位」と悩みは深い。

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それでも愛媛FCは、次も懸命に戦う姿を見せてくれるだろう。

それは、スタジアム前の広場にいる彼らの誇りでもある。

勝てば嬉しいし、負ければ悔しい。

それでもチームはいつも全力で戦ってくれる。

彼らはそれを知っているから、夢を見続けることができる。

「22チーム中、22番目 J2の最下位チーム」

ただそれは1つの側面に過ぎない。

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15年前の2005年12月、

松山市内のクラブ事務所にかかってきた「1本の電話」から

「Jのある生活」が始まった愛媛。

今も夢があり、サッカーがあり、クラブが地元にある。

そしてこのコロナ禍でも、子供たちはボールを追い続けている。

願わくば、次は彼らに"ゴールのイメージ"も与えてほしい。

2020年9月24日(木)

理想を追って「最下位」

たしかに「最下位」だが「転落」ではない。

転落には「意外にも」という意が少し含まれている。

しかし今季「愛媛FC」の順位は着実に後退していき、

きのう「底」に着いた。それだけのことだ。

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全42試合の半分、前半21試合を終えた時点で

「最下位」。とてもわかりやすい。

つまり現在、J2の22チーム中、

最も「勝ち点が少ない」チームである。

しかし愛媛FCは、最も弱いチームではない。

最も勝ちが少ないチームではない。

最も負けが多いチームでもない。

それでも「最下位」だ。

とても難しい。

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でも1つ理由をあげるならば、

愛媛FCは「最もチャレンジしている」チームだ。

「最下位」はその証であり、勲章だろう。

「15年」もJ2を見ていればみんな気がついている。

勝ち点をぬかりなく積み上げ順位を上げていく方法ぐらい・・・

中盤を省略し、背の高い前線の選手にボールをあずけ

2列目が飛び出して最短コースでシュートを叩き込む。

あるいはセットプレーの名手が

ピンポイントで長身選手に合わせてゴールをもぎとる。

点を取ったら、あとは引いてガチガチに守って、無失点で逃げ切る。

それを1シーズン、ひたすら繰り返していく・・・。

ただ、そこに未来はあるか―

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たしかに負けは引き分けに、引き分けは勝ちに変わり、

勝ち点が増え、順位も上がる。

観客は増え、クラブにゆとりが生まれ、笑顔が増える―

しかし愛媛FCは、「安易に」それを手に入れることを良しとしていない。

頑として、「理想」のポゼッションサッカーを追い求めている。

ゴールキーパーの足元から、いや、時には手から転がされたボールは

最も近い位置にいるディフェンダーへ。

そこからボランチを交えて地道にパスを繋ぎ、簡単には強行突破しない。

そして縦横のショートパスで地道に相手の食いつきを誘引し

十分に手数をかけて相手選手の間隔を広げていく。

そしてここぞの瞬間、DFのウラへ飛び出したフォワードに

一撃必殺のスルーパスを送りこみ、ゴールマウスに流し込む・・・。

ボールを徹底的にキープし、主導権を渡さない。

「回させられている」と言われようが、

ペナルティエリアの外から、自分たちの仕掛けでスペースを作り、そこを突く。

前半21試合で、愛媛FCの得点は「21」。

わかりやすい。1試合で1点の割合だ。

その1点で勝つ場合もあり、負ける場合もある。

ただ、愛媛FCがあげた「1点」の重みや意味が、

最下位なのだろうかー

新型コロナの影響で、先の見えない準備期間を含め、

前例が一切通用しない「史上初だらけ」だった前半戦。

"理想を追って最下位"

結構かっこよかったりするかも。

後半戦はあさってから始まる。

全てのチームを追う立場。とても分かりやすい。

ただ「最下位」を楽しめるのはこの2日だけかもしれない。

川井監督は言う。

「最終戦が終わったわけではない。手応えは感じている」

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