「122」の夢、「104」の決意
「悔いの無いプロ野球生活だったなと すごく思います。
一年一年、全力でやりましたし
出せるものは全て出し切ったという
思いがすごく強いです」
西山道隆さん
(2010年4月24日 坊っちゃんスタジアム)
坊っちゃんスタジアムが似合う選手が
また1人、現役を引退した。
西山道隆投手。
元愛媛マンダリンパイレーツの150キロ右腕だ。
プロフィールは省略―
しかし30歳になった。
2006年ソフトバンクホークスの「育成枠」で「122番」を背負い、
2010年「ファームスタッフ」として、今「104番」を背負う。
それが現実―。
「とにかく黒子に徹して
選手の皆さんが少しでもやりやすいように
少しでも1軍で活躍出来るように
微力ながら役に立てれば有り難いですね」
1軍で白星がなかった西山投手。
それも事実―。
制球力に苦しんだ西山投手。
それも事実―。
でも、ファンは忘れない。
記録本に残らないNPB4年間の物語を―
「おい、ニシ!今、何球や?」
「100球です・・・」
本当は「400球」投げていたあなたの頑張りを―
いつまでもいつまでも
坊っちゃんスタジアムの周りを走っていた姿を―
そしてソフトバンク2軍の「雁の巣球場」での猛練習ぶりに
当時の大エース「斉藤和巳」も舌を巻いたことを―。
「でも結果が出なかったから、やはり努力が足りなかったんです」
背番号「104」は続けた。
「でも、ひとつ言わせてもらえるなら、
アイランドリーグの選手たちには
絶対に自分の可能性を信じて続けてほしい」
愛媛MPとの交流戦開始2時間前、
「西山さん」が坊っちゃんスタジアムのマウンドに向かった。
しかし西山さんの足は
ピッチャーズプレートの数メートル前で止まる。
そして防護ネットに囲まれながらケースからボールをひとつ握った。
右打席には「背番号2」
ルーキーの今宮健太。明豊高校出身。
高校通算64ホーマー、MAX154キロ右腕。
去年、夏の甲子園では西条秋山を破り、菊池雄星に敗れた
ソフトバンクの「ドラフト1位」だ。
風はまだ冷たいが、初夏の日差しの坊っちゃんスタジアム。
西山は汗をぬぐい、帽子を被り直し
そしてゆったりとしたモーションから右腕を振り抜いた。
「打ってくれ」と祈りながら―