高橋浩由の「スポーツ素敵に隠し味」

2009年10月12日(月)

扇の要の決断

 

扇の要は手に隠れて見えない。

 

しかし扇を支えているのは見えない部分だ。

 

 

その見えない部分でキャッチャーは、

局面を分析し、先を読み、次の1球を決断する。

非情な結果と常に隣り合わせだが、それが醍醐味だ。

 

 

 

そんな瞬間が訪れたのは、

四国高校野球愛媛県大会 3位決定戦 済美-野村。

局面はこうだった。

 

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2対2の同点。9回ウラ、済美の攻撃。2アウト2塁。

打者は5番の喜井。

野村のピッチャーは先発、エースの市川。

2塁ランナーが帰れば済美のサヨナラ勝ち・・・。

必要なのはアウト1つ。

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この日、済美の5番喜井はここまで4打数ノーヒット。

フライが2つ、内野ゴロが2つ。

さらに打球の行方はサード、ショートのみ。

野村の市川の緩急にタイミングはまだ合っていない。

打ち取れる確率は高いだろう。

 

しかし1塁が空いている。

歩かせてもよい。

 

すると勝負は6番の山下か。1年生だ。

しかし注意すべきは「済美の」1年生だ。

しかも1年生でベンチ入りしているのは2人だけ。

「選ばれし」1年生だ。

 

この試合は途中出場。

そして6回の初打席、レフトフェンス直撃のツーベースヒット。

しかもカウント2-0からファウル2球を絡め、

2-3まで粘っての一撃だ。

 

さらに8回の第2打席は、フォアボール。

しかしカウント2-0から、ファウルで粘ってのフォアボール。

野村の市川の緩急に合っている。

 

野村のキャッチャー井関の頭に

以上のことが瞬時によぎる。

 

 

 

s-野村戦 スコア.jpg

 

 

そして井関。

「喜井はイヤな感じがしました」

 

分かる。

ここまでノーヒットのバッターは開き直っていて危険だ。

まして5番バッター、不調とはいえクリーンアップ。

そしてなによりも彼らは「済美」だ。

終盤見せる驚異の粘り、集中力は並ではない。

そのチームのキャプテンが「喜井」だ。

 

井関は振り返る。

「ベンチの監督さんも歩かせるということだった・・・」

 

結果、野村バッテリーは喜井を「敬遠」した。

これが良かったか、悪かったかは関係ない。

「敬遠という決断」は最大限尊重されるべきだ。

 

問題は次をどうするかである。

 

迎えた6番、1年生の山下。

「打気にはやる」バッターに「初球ボール」はセオリーだ。

 

しかし、2球目―

 

済美の1年生山下の打球はセンターの右を一直線に抜け

サヨナラタイムリーとなった。

 

井関は振り返る。

「この試合1番の、気持ちのこもったボールだった・・・」。

 

あえて悔やむならこの1球か・・・。

力んだ分、ボールは高めに浮いていた。

 

s-野村戦 スコア2.jpg

 

 

試合後、キャッチャー井関は悔し涙を流し、

唇をかみ締めながら言葉を搾り出した。

 

「次の夏は、絶対に甲子園に行きます」

 

局面を分析し、先を読み、次の1球を「決断」する。

 

非情な結果と常に隣り合わせだが、

 

非情な結果は「経験」として刷り込まれ

 

次の局面では強力な武器になる。

 

秋の四国大会に限りなく近づいた2009年10月11日。

夏まで、9ヶ月。

 

野村から目が離せない。

 

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秋の四国高校野球愛媛県大会 3位決定戦。

済美3x-2野村

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