「スクイズ」に感じる甲子園
「スクイズ」はこうやるのか!
その駆け引きと攻防に目を奪われた。
夏の甲子園 大会初日第3試合 西条vs八千代東
0対0で迎えた3回表。
この回先頭の7番バッターがヒットで出塁した。
これがチームの初ヒット。大事にしたいランナーだ。
ところが続く8番バッターの2球目。
ランナースタート。
意表を突かれ、キャッチャー握りが甘く盗塁成功。ノーアウト2塁。
となれば「送りバント」あるのみ。
しかし3球目、球威に負けて送りバントはファウルでカウント1-2。
これを見て守備側は、
仮にバントをされても3塁でさせると推測(したのでは・・・)
そして4球目、攻めのピッチング。
ところが、「あっさり」送りバント成功され1アウト3塁。
千葉大会でもチーム2位の犠打3つを決めていたバッターだった。
そして9番バッターを迎えるのである。
スクイズが決まるまで、あと「6球」。
もちろん球場全体が「スクイズ」があると確信している場面だ。
「1球目」
当然バッテリーはウエスト。様子を見た。カウント0-1。
これは分かる。
そして次のボールだ。
バッテリーは、まだ外せるカウント。
一方攻撃側のベンチも「待て」のサインを出せる。
バッテリーが外してくれれば0-2。
ストライクを取りにきても1-1。
しかしベンチは勝負に出た。
ところが、バッテリーは読んでいた。
「2球目」
ランナースタート。バッターはスクイズのスタンバイ。
しかしバッテリーのサインは「外のスライダー」。
結果は、ファウル。これでカウント1-1。
バッテリーの受けた印象として考えうるのは
「やはりデータどおり積極的」。
しかし
「これで強攻策にサインを変えてくるかも」。
一方バッター側には
「一発で決められなかった悔しさ」が残っているはず。
そして次の球。
腹の探りあいの結果、
バッテリーはコーナーを狙う。
スクイズをやってきたら、球威で押してファウルか小フライに。
強行策に切り換えたとしてもボールならば手を出せない。
しかし攻撃側ベンチは「待った」。
「3球目」
判定はボール。
これでカウント1-2。
バッター有利のカウントに変わった。
まだスクイズで失敗することも出来る。
ここでバッテリーサイドの心理として想像できるのは
「次こそやってくるか・・・
しかしウエストすれば、
カウントは1-3と劣勢になる・・・」
「4球目」。
バッテリーはコーナーを突いて様子を見た。
しかしバッターはまたも「待った」。
判定はボール。
結局、ベンチは「2球続けて動かなかった」。
これでカウント1-3。
確認すると、バッターはスクイズにきてファウルとなり
その後2球は全く動かなかった。
バッテリー的には「スクイズの可能性は低くなった」と
感じ始めても不思議ではない。
そして考えられる心理としては、
「歩かせるのはご免だ」
「ファウルでもカウントを稼ぎたい」
「なんとか2-3にもっていって、
スクイズの可能性をほぼ消してしまいたい」
「強攻策に変われば、9番バッターだけに打ち取れる可能性は高い」
しかし5球目。
「スクイズ」だった。
完全にウラを書かれたバッテリー。
しかし結果は「ファウル」。
「助かった・・・」
と同時に確信したことだろう。
「もう、スクイズは無い・・・」と。
2度スクイズを失敗したバッター。
強攻策に切り換えざるを得ないだろう。
なによりも「スリーバント」を決められるほど甘い球威ではない。
軍配はほぼバッテリーサイドに上がったかと思われた。
ところが、「6球目―」
ランナースタート。
そしてボールは球威に押されながらも一塁手の前に転がった。
「スクイズ成功」
八千代東に先制点が転がり込んだ。
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愛媛大会で秋山の失点は、33回1/3を投げてわずかに「4」。
しかしその1点を、甲子園の初戦で、
しかも「ヒット1本」で奪った八千代東のベンチワークの巧みさ。
結局、西条はこのあと「3対2」というスコアで競り勝った。
しかし、このスクイズのシーンをはじめ
盗塁を仕掛けるタイミングなど
野球の質の高さ、戦術の完成度には目を見張るものがあった。
チーム打率「2割5厘」
今大会参加49校中最低の数字で臨んだ八千代東。
しかもそのうち6試合が「1点差」ゲームという
異常なまでの快進撃の理由を
まざまざと見せつけられた気がした一戦だった。
甲子園で全国制覇するには「6試合」しかない。
その間、どれだけチームが成長していけるか。
西条にとって、初戦で1点差ゲームを制した意義は大きい。
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夏の甲子園 1回戦
西 条 3-2 八千代東(千葉)
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