■洗濯機に誓う夏
ガタンゴトン、ガタンゴトン。
ダーッ、ブルブルル・・・
甲子園出場校の愛媛県チームの宿舎、
兵庫県尼崎市にある「尼宝館」。
その玄関先を右に曲がり、
少し先を左に曲がると、
そのコインランドリーはある。
大会中、数台ある洗濯機は昼夜フル稼働する。
ユニフォームの洗濯だ。
担当は「当然」1年生。
いつもの光景だ。
おびただしい数の洗濯物がここには運び込まれてくる。
いや、「集めてくる」。
そして、終わりの無い洗濯が始まる。
最近は自動化が進み、途中の手間は減った。
しかし作業は練習終了後から、夕食をはさみ深夜にまで及ぶ。
洗濯が終わって一息つくと、もう東の空は白々と明るい。
絶望的な気持ちになるが、緊張感の方が上回り眠気などない。
・・・はずもないが、ここが1年生の甲子園。
寝ている暇などない。
しかし、そんな作業も終わりの日がやってくる。
先輩たちが負けた―
そんな夜は、洗濯時間も長くなる。
どうしても長くなってしまう。
膝から下が真っ黒のズボン。
(先輩最後までよく投げたよな・・・)
ズボンのおしりについた土の跡。
(あの盗塁、いいスタートだったよな・・・)
ズボンのももについた5本の汗染み。
(先輩、バッターボックスで何度も手の汗を拭いてたっけ・・・)
そして、胸のマークが見えなくなるほど張り付いた土。
(最後のヘッドスライディング・・・本当に負けたんだな)
1枚1枚の布に刻まれた激闘の跡・・・
これまでとは全く違って見える先輩たちのユニフォーム。
静かに、しかし深くズシンと、胸に語りかけてくる。
振り返れば、籠には順番待ちのユニフォームがたっぷり。
本当にきれいさっぱり洗い落としてしまっていいのだろうか。
僕たちの手で・・・