
もう5回目だ。
またこの日がやってきた。
愛媛マンダリンパイレーツのホーム最終戦。
優勝争いをしていても、最下位争いをしていても
この日は必ずやってくる。
スタンドには「5000人」ものファンが駆けつけた。
入場料が無料だとか、特別割引があるからとかそんなことではない。
彼らが旅立つ前に・・・
(9月19日 坊っちゃんスタジアム)
愛媛で5000人が動くイベントはそうはない。
自宅を出て、子供をつれて、友人と待ち合わせて、電車に乗って、
迎えに行って、弁当調達して、歩いて、球場行って、チケット買って、
メガホンを何百回も叩いて・・・
そんなこと、自主的でなくて誰がしよう。
投票に行くよりハードルは高い。
それでも目に焼き付けておきたいと
坊っちゃんスタジアムにやってきた5000人。
少し長めの「一時停車」だったかもしれないが、
今年も「旅人」を見送るプラットホームには
大声で、あるいは心の中でエールを送る人でごった返していた。
試合後、選手にマイクを向ける。
表情は様々で複雑だ。
やりきった実感に満ち溢れている者。
やり残した後悔に苛まれている者。
この日、完投した「近平省悟」の言葉は印象的だった。
スコアボードに「グッバイ ベースボール」と記した近平が
この夜、およそ3時間に渡って演じた完封劇は
人の心を動かすのに十分な物語性をもっていた。
宇和島東時代にも同じ質問をした記憶がある。
「ピッチャーにとって大切なものは何?」
近平は即答した。
「それは、チームが勝つことです。
1対0でも10対9でも関係ありません。
自分のピッチングでチームの勝利に貢献することだけを考えて
投げてきました」
近平の表情は穏やかだった。
「夢」と「現実」が、より際立って見えてくる9月。
若き旅人たちも、秋風に敏感だ。
夢を叶える者
夢を追い続ける者
夢をあきらめる者
道は3つ。
ただ、贈られるエールはどれも等しい。
それを知っているファンが、この地には少なくない。
だがもうひとつ「今が夢の中」という生き方もあることを紹介したい。
長崎セインツに今月、1人の投手が入団した。
「長坂秀樹」投手。
愛媛の高校野球ファンならピンと来る方も多いだろう。
96年、「奇跡のバックホーム」で全国制覇した松山商業が
あの夏、甲子園の1回戦で破った東海大三高のエースがこの「長坂」だ。
愛媛新聞に掲載された、左足を直角に上げてタイミングを取る
長坂の「型破り」なバッティングフォームは印象深い。
日本でプレーするのは10年ぶりという長坂。
その間彼は、アメリカの独立リーグを渡り歩き
9つの球団でプレーしてきたという。
彼自身のブログによれば、
フロンティアリーグ 「クックカウンティー・チーターズ」
ウェスタンリーグ 「ソラノ・スティールヘッズ」
ノーザンリーグ 「リンカーン・ソルトドッグス」
ゴールデンベースボールリーグ「侍ベアーズ」
ゴールデンベースボールリーグ 「チコ・アウトローズ」
カンナムリーグ 「ナシュアプライド」
ズラリと見慣れないチーム名が並んでいて楽しい。
彼は「NPB」でも「MLB」の投手でもない。
しかし「その2つのリーグ」を除けば、
彼は立派に給料を貰いながら「ベースボール」を続けてきた。
そして「世界を旅するプロ野球選手」の第一人者が
同じ長崎セインツの「根鈴雄次」選手だ。
彼のことは以前にも記させていただいたが、
エクスポズ傘下の3Aにまで上り詰め、
アメリカ独立リーグ→メキシカンリーグ→アメリカ独立リーグ
→カナダリーグ→アメリカ独立リーグ→オランダリーグ→
BCリーグの新潟アルビレックス→長崎セインツ
波乱万丈の球歴にも見えるが、
世界をつなぎ、人生をより豊かにしてくれる「白球」の力を
「ネオ野球人根鈴」は静かに伝えてくれている。
夢の向こうにあるのものは何か―
「野球選手」にとって「10月29日」は運命の分かれ道だが、
「野球人」にとっては、ほんの「通過点」かもしれない。
「旅」の楽しみ方は人それぞれだから。
「スクイズ」はこうやるのか!
その駆け引きと攻防に目を奪われた。
夏の甲子園 大会初日第3試合 西条vs八千代東
0対0で迎えた3回表。
この回先頭の7番バッターがヒットで出塁した。
これがチームの初ヒット。大事にしたいランナーだ。
ところが続く8番バッターの2球目。
ランナースタート。
意表を突かれ、キャッチャー握りが甘く盗塁成功。ノーアウト2塁。
となれば「送りバント」あるのみ。
しかし3球目、球威に負けて送りバントはファウルでカウント1-2。
これを見て守備側は、
仮にバントをされても3塁でさせると推測(したのでは・・・)
そして4球目、攻めのピッチング。
ところが、「あっさり」送りバント成功され1アウト3塁。
千葉大会でもチーム2位の犠打3つを決めていたバッターだった。
そして9番バッターを迎えるのである。
スクイズが決まるまで、あと「6球」。
もちろん球場全体が「スクイズ」があると確信している場面だ。
「1球目」
当然バッテリーはウエスト。様子を見た。カウント0-1。
これは分かる。
そして次のボールだ。
バッテリーは、まだ外せるカウント。
一方攻撃側のベンチも「待て」のサインを出せる。
バッテリーが外してくれれば0-2。
ストライクを取りにきても1-1。
しかしベンチは勝負に出た。
ところが、バッテリーは読んでいた。
「2球目」
ランナースタート。バッターはスクイズのスタンバイ。
しかしバッテリーのサインは「外のスライダー」。
結果は、ファウル。これでカウント1-1。
バッテリーの受けた印象として考えうるのは
「やはりデータどおり積極的」。
しかし
「これで強攻策にサインを変えてくるかも」。
一方バッター側には
「一発で決められなかった悔しさ」が残っているはず。
そして次の球。
腹の探りあいの結果、
バッテリーはコーナーを狙う。
スクイズをやってきたら、球威で押してファウルか小フライに。
強行策に切り換えたとしてもボールならば手を出せない。
しかし攻撃側ベンチは「待った」。
「3球目」
判定はボール。
これでカウント1-2。
バッター有利のカウントに変わった。
まだスクイズで失敗することも出来る。
ここでバッテリーサイドの心理として想像できるのは
「次こそやってくるか・・・
しかしウエストすれば、
カウントは1-3と劣勢になる・・・」
「4球目」。
バッテリーはコーナーを突いて様子を見た。
しかしバッターはまたも「待った」。
判定はボール。
結局、ベンチは「2球続けて動かなかった」。
これでカウント1-3。
確認すると、バッターはスクイズにきてファウルとなり
その後2球は全く動かなかった。
バッテリー的には「スクイズの可能性は低くなった」と
感じ始めても不思議ではない。
そして考えられる心理としては、
「歩かせるのはご免だ」
「ファウルでもカウントを稼ぎたい」
「なんとか2-3にもっていって、
スクイズの可能性をほぼ消してしまいたい」
「強攻策に変われば、9番バッターだけに打ち取れる可能性は高い」
しかし5球目。
「スクイズ」だった。
完全にウラを書かれたバッテリー。
しかし結果は「ファウル」。
「助かった・・・」
と同時に確信したことだろう。
「もう、スクイズは無い・・・」と。
2度スクイズを失敗したバッター。
強攻策に切り換えざるを得ないだろう。
なによりも「スリーバント」を決められるほど甘い球威ではない。
軍配はほぼバッテリーサイドに上がったかと思われた。
ところが、「6球目―」
ランナースタート。
そしてボールは球威に押されながらも一塁手の前に転がった。
「スクイズ成功」
八千代東に先制点が転がり込んだ。
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愛媛大会で秋山の失点は、33回1/3を投げてわずかに「4」。
しかしその1点を、甲子園の初戦で、
しかも「ヒット1本」で奪った八千代東のベンチワークの巧みさ。
結局、西条はこのあと「3対2」というスコアで競り勝った。
しかし、このスクイズのシーンをはじめ
盗塁を仕掛けるタイミングなど
野球の質の高さ、戦術の完成度には目を見張るものがあった。
チーム打率「2割5厘」
今大会参加49校中最低の数字で臨んだ八千代東。
しかもそのうち6試合が「1点差」ゲームという
異常なまでの快進撃の理由を
まざまざと見せつけられた気がした一戦だった。
甲子園で全国制覇するには「6試合」しかない。
その間、どれだけチームが成長していけるか。
西条にとって、初戦で1点差ゲームを制した意義は大きい。
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夏の甲子園 1回戦
西 条 3-2 八千代東(千葉)
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夏の甲子園の話題の前にこれだけは!
甲子園大会終了後の8月25日から
韓国ソウルで開かれる
「アジアAAA選手権」の全日本高校選抜メンバーが発表された。
愛媛の野球ファンなら、ピン!とくる方も多いと思いますが、
96年のこの大会には、
現在レイズの「岩村明憲選手」が唯一、
その夏の「甲子園出場メンバー以外」で全日本選抜入りし
「4番」を任され、さらにホームランをかっ飛ばし、
あのベーブルースの隣に名前が刻まれたことでも知られている。
今大会では「関東地区から夏の甲子園に出場しない3年生18人」という
条件の中での選抜メンバーとなったが、
日の丸を胸に戦う気持ちの昂ぶりは想像に難くない。
そして本題!
わが母校、西東京の「早大学院」からついに代表入り選手が現れたのだ。
大野瑠哉 投手。
一度もお目にかかったことがないのが先輩として恥ずかしい限りだが、
MAX138キロの右サイドハンドとのこと。
スライダーもいいようで、ぜひこの絶好の機会を将来にビシッ!と
繋げてもらいたいと期待することこの上なし。
同時に選ばれた慶応の白村明弘投手はすでに全国区だが、
ぜひ「学院の大野」をアジアにアピールしてもらいたいと思う。
ガンバレ!
(写真もなんにも無し・・・)
「初球」だった。
「BMW」に向かって放物線を描くその「打球」。
ライトライン際の上空を右にも左にもそれることなく
ライトフェンスの「BMWの広告」に向かって真っ直ぐに飛んでいった。
秋山拓巳。
決勝戦の第1打席のことだ。
きのうの準決勝で「3打席連続」の敬遠で歩かされた秋山。
(愛媛の高校野球ファンは歴史に酔う) 決勝戦。
ジャンケンで勝って「後攻」を選んだのは対戦相手の済美。
当然だろう。
準決勝の逆転スリーランホームランで
今年も「上甲マジック」健在ぶりをアピールし、
後半の粘りには絶対の自信を手にしていた。
「守り」から・・・いや、「秋山のピッチング」から流れを作り
攻撃に移りたかった西条は、
早くも名将の揺さぶりに遭っていた。
そんな中、2アウト1塁の場面で
左バッターボックスには「4番秋山」。
済美は、鈴木―喜井の2年生バッテリー。
初球、キャッチャー喜井は先に左足を動かした。
まずは「アウトコース低め」のストレートで様子を見よう・・・
しかし1球目。
主砲を前に、鈴木の初球は「逆球」になった。
喜井の構えたミットからはるか右寄り上方へ・・・つまり「インハイ」。
ボールは秋山の胸元を襲い、差し込まれたように見えた。
ところが・・・
次の瞬間、秋山の体は鋭く回転。
その動きに合わせながら
バットのヘッドは最短コースの周回軌道を通過した。
「ガキッ」
快音とは言い難い、なにか堅い物同士がぶつかり合うような打球音。
つまり「詰まった打球」だった。
そして詰まった分、ボールは右に切れなかった。
だが、問題はその「飛距離」だ。
済美のライト梶本は、すぐに「背番号9」を
こちら側に向けることになった。
打球はあっという間にフェンスに達し、
秋山は「快足」を飛ばして3塁に達した。
この先制パンチで勢いに乗った西条は一気に頂点を極めた。
これが秋山の「打」だ。
そして「投」の秋山。
中2日の登板ではあった。高校野球の世界では「休養十分」といえよう。
だが、決勝戦終了後のお立ち台で秋山は吐露した。
「疲れていたので・・・」
なにしろ140キロ台を投げ続けているのだ。
並のピッチャーとは疲労度も違うのだろう。
しかし1回ウラ、済美の先頭浅岡を迎え、
初球は140キロのストライク。
この後、139キロ、140キロとスコアボードに刻むと
カウント2-1からの4球目。
147キロ―。
ここは済美の1番・浅岡もファウルに逃げるが、
続く5球目、
124キロのスライダーにタイミングが合うことはなかった。
この完璧な制球力を、
秋山は決勝戦の1人目のバッターから披露するのだからたまらない。
そして、2時間後―
終盤8回、秋山の前には済美のクリーンアップ。
しかし3番、4番の左バッター2人を簡単に内野ゴロで2アウト。
そして5番喜井に対し、カウント2-2からの5球目。
スコアボードには「145キロ」が表示され、
喜井のバットは空を切った。
「フォーム」で投げている秋山。
球速は全く衰えず、変化球の制球力も変化なし。
まるで「金太郎飴投法」だ。
結局、今大会秋山は
33回1/3を投げ、三振「38」。
「140キロ」のボールをファウルさせておいて、
「145キロ」のストレートか、
「124キロ」のスライダーか。
相手バッターに求められるレベルは低くない。
プロ10球団16人のスカウト陣が熱視線を注いだ
準々決勝の帝京第五戦。
秋山は7回を4安打10三振で1失点に抑え、
スカウトのスピードガンに「150」を刻み度肝を抜いた。
新聞報道によれば、中日のスカウト部長が
「投手としての評価も高いが、
バットの出がスムーズで長距離打者の資質もある」と口にしたという。
「打」で行くのか。
「投」で行くのか。
さあ、秋山の舞台は甲子園に移る。
敵は「真夏の太陽」だけかもしれない。
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夏の高校野球愛媛大会 決勝 坊っちゃんスタジアム
西 条 13-2 済 美
(17年ぶり6回目)
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平井がおかしい・・・
もう誰の目に明らかだった。
2回ウラ、西条7番からの下位打線を相手にボールが先行していく。
球速はすでに130キロ台。
自慢の速球も影を潜めていた。
8時半開始の第1試合。西条 vs 帝京第五。
スタンドはこの夏の大一番を目に焼き付けよう・・・
いや、見るべきだ・・・
いえ、自分には見る義務がある!
という野球王国ファンの自覚はピークに達していた。
変化の兆しは初回から見えた。
試合開始直後、1番「佐伯」、2番「越智」を連続三振。
ところが3番「森」の時に、サードがエラー。
そして4番「秋山」。
「平井」と1年生キャッチャーの「谷口」は
ことのほか慎重になっていた。
初球、126キロのスライダーで探りを入れボール。
2球目、137キロ、3球目、138キロのストレートで
コーナーを突くがボール。これでカウントノースリー。
そして4球目、
「平井」は137キロのストレートでストライクを取りに行った。
ところが・・・
「秋山」はこれを打ちに行き、打球はセンター前に弾き返された。
ノースリーから打ってくるとは・・・
しかしストレートが3球続き、いずれも137キロ。
単調な配球に「秋山」のバットはなんのためらいもなく始動した。
そしてここから、「平井」は「腕が振れなく」なっていった。
逆に「秋山」は尻上がりにリズムを掴んでいく。
2回を6球で三者凡退に切って取ると、
3回は1アウト2塁から2番「宮崎」を139キロストレートで三振。
3番「向岩」を空振り三振に仕留めた球は145キロを計測した。
さらに4回、先頭4番「平井」を119キロの変化球で空振り三振。
5番「猪野木」を143キロのストレートで見逃し三振。
「4者連続の三振ショー」を演じた秋山。
流れは完全にこの男の右腕にあった。
ところが・・・
4回ウラ、「平井」は
この大会のハイライトとも言えるピッチングを披露することになる。
ヒットにエラーに死球など散々な内容でノーアウト満塁。
最悪の状況でここから西条のクリーンアップと対峙した。
そして先頭の「森」への初球。
「平井」は鋭い腕の振りから、
この試合最も遅い108キロのカーブを投じた。
ボールにはなったが
前の打席ツーベースヒットの「森」には効果的だった。
リズムを崩された「森」は、結局セカンドフライに倒れた。
そして4番「秋山」。
カウント2-2からの5球目。「平井」は腕を思い切って振った。
地を這うような低めの軌道に「秋山」のスイングは始動。
ところがボールは鋭く曲がり落ち、バットは空を切った。
129キロのスライダー。
バッターのタイミングをはずすのは、
「球速の緩急」よりも「腕の振り」・・・
「平井」は原点に返り、息を吹き返した。
そして5番「司馬」も空振り三振。
ノーアウト満塁から3番、4番、5番を打ち取り
無失点で切り抜けた「平井」。
続く5回も2アウト満塁のピンチを迎えたが
2番「越智」を空振り三振で無失点。
1点もやれない場面で「平井」は見事に才能に磨きをかけた。
結局、帝京第五はこの試合コールドゲームで敗れたが
調子の悪いときこそ何をすべきか・・・
「平井」は敗戦のマウンドで進化した。
でもなぜ、腕が振れなくなるのか―
それは・・・またの機会に。
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夏の高校野球愛媛大会 準々決勝 坊っちゃんスタジアム
西 条 8-1 帝京第五
(7回コールド)
******************************
「自分のピッチングが出来て
全て出し切れたので悔いはありません」
そう言い切れるほどの出来事は、
そうそう人生には現れるものでもないだろう。
松山中央、エース「重川和真」投手。
目には光る汗。涙ではない。
7回、ノーアウト2塁3塁。
ここから始まる第1シードのクリーンアップ。
ヒット1本で2点が入れば5対0と試合は決まる。
松山中央内野はバックホーム体勢、前進守備だ。
3番森。
カウント2-2からの5球目。
強い当たりだったがサードゴロ。
ランナー動けず。
そしてこの試合4度目、4番秋山を迎えた。
状況は1アウト2塁3塁。
「1塁は開いている」・・・なんて書くのは野暮だ。
勝負―
カウント1-1からの3球目。
秋山のバットにボールが当たる。
いや・・・当てた。
ピッチャーゴロ。
そして、5番大藤もファーストゴロ。
重川は見事、西条の3番、4番、5番を打ち取り
ランナーにホームを踏ませなかった。
(7回 重川vs秋山)
「ツーシームです」
試合後、重川は明かした。
「左バッターにはツーシームが有効だったので・・・」
重川がこのウイニングショットに自信を深めたのが
1回ウラ、秋山の第1打席だった。
立ち上がり重川は
西条の1番キャプテン井下、2番佐々木を
低めの球で内野ゴロに打ち取る。
ところが3番森に対し、突然ストレートのフォアボール。
まさか・・・
そして迎えた4番秋山の第1打席。
重川―清家のバッテリーは勝負、いやテストに出た。
初球、ストレート。
ホームプレートの外角いっぱいに決まるストライク。
ここで、キャッチャー清家の腰が少し浮き、
先に動いたのは右足だった。
2球目。
インコースのボールに秋山の巨体は瞬時に反応。
しかしその直後、ボールの軌道は変化し、バットは空を切った。
インコース低めのスライダーは清家のミットに収まった。
これで2ストライク。
そして再びキャッチャー清家は外に構える。
一方、投手重川を見つめる秋山もその気配には気づいていただろう。
いや、あえて気付かせたか・・・
そして運命の3球目。
重川はストレートの腕の振り。
秋山のバットがボールに最短距離で近づく。
ところが・・・流れて、落ちた。
秋山のバットには何も起こらず3球三振。
最高の打者相手に「実験」を終えた重川―清家バッテリー。
左バッター攻略法についての自信は確信に変わった。
しかも「初回」に・・・
確かに、3番森を討ち取って、
2回ウラの先頭バッターとして秋山と勝負する方法もあっただろう。
しかしそれでは、2回の表に秋山にいいピッチングをされた場合、
松山中央打線の気持ちにはあきらめムードが漂い、
秋山は気分のいい状態で打席に入ることになる。
逆に1回のうちに秋山を封じることが出来れば、
バッテリーだけでなく、ナインにも
まだ互角の勝負をしているという気持ちにもなれる・・・
推測が過ぎるだろうか。
ただ、バッテリーの選択はこの時、最高の結果を導き
その後のピッチングの内容を深めることに成功した。
結局この試合、松山中央バッテリーは
西条の4番秋山をはじめ左バッター3人に許したヒットは1本。
5番司馬の内野安打だけだった。
しかし勝負は、
西条の「右バッター」3番森、6番佐伯のタイムリーで決まった。
試合後、重川は落ち着いてた・・・ように見えた。
「後輩たちには、僕たちが出来なかった分も
来年の夏、頑張ってもらって・・・」
重川の顔が少しゆがんで見えた。
でもそれは、
彼の「目に浮かぶ汗」によるものだけではなかった気がする。
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夏の高校野球愛媛大会 3回戦 坊っちゃんスタジアム
西条 3-0 松山中央
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あたりが暗くなり始めたことに
スタンドの観客が気がつき始めたのは5回終了ごろだった。
坊っちゃんスタジアムの上空には
厚い雲の隙間から覗く太陽。
目を凝らしてしばらく見つめてみた。
意外に肉眼でもはっきり見える。
右上部付近が、クリンと欠けていた。
上空を何度も見上げる。
暗くなり始めたグラウンドを前にしていると
厚い雲に太陽が隠れてしまったのかと感じるのだが、
見上げれば太陽は雲間にある。
光量が激減しているのだ。
「太陽」と「月」と「地球」
3つの天体が織り成す宇宙の奇跡―
そんな最中、はるか上空で起きている歴史的宇宙現象など意にも介さず
地球上で「白球」を必死に追いかける球児たち。
そして太陽が次第に輝きを失っていく中、
次第に輝きを増していく「1人の地球人」にも注目が集まっていた。
投手 平井 諒。
帝京第五のエースだ。
日食の進行に合わせるかのように快投を続ける平井。
そして辺りが最も暗くなった午前11時過ぎ、投了。
この試合、ストレートは145キロを計測。
13奪三振で2試合連続完封。
去年のノーヒッターはやはりモノが違った。
打っては5打数5安打。まさに「ゾーン」突入だ。
歴史的な天体ショーの間、輝き続けた平井。
次はギラギラの灼熱の太陽と輝き比べだ。
期待は高まり、興味は尽きない。
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全国高校野球愛媛大会 2回戦 坊っちゃんスタジアム
帝京第五 4-0 北条
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(午前11時 坊っちゃんスタジアム) そんなに気合を入れんでも、もう十分熱気は伝わっとるわい!
そう思いたくなるほど、
気合十分ギンギラギンの太陽が照りつけたこの日、
愛媛に球児たちの夏が訪れた。
午前11時に始まった開会式。
60校の選手たちのユニフォームが眩しいこと・・・。
もちろんギラギラの太陽によるものであり、
若人たちの発する「気」によるものであろう。
あまりに暑すぎて、ブラスバンドの生徒達が心配だったがそれも杞憂。
素晴らしい演奏で選手たちの青春に鮮やかな彩りを加えた。
そして「選手宣誓」。
全校キャプテンによってホームプレート前に小さな輪ができると
彼は右の手のひらを灼熱の太陽にさしだし、
夏の空気を大きく胸に取り込んだ。
そして60校の球児たちと、
参加が叶わなかった高校の生徒たちと、
かつての球児たちの思いをひとつに重ね、
愛媛の夏空に向け解き放った―
********************************
「宣誓 我々選手一同は
多くの方々に支えられ、教えられ、
友と一緒に汗を流し、
心と技と体を鍛えてきました。
汗を流して己の道を悟る
まさに、『流汗悟道』の教えのもと
仲間とともに野球ができる素晴らしさを実感しています。
我々の熱い思いを胸に
甲子園という夢の舞台に向かって
この大空のもと、最後まであきらめず
全力でプレーすることを誓います」
****************************
開会式終了後、すがすがしい表情で
インタビューに答えてくれた
大洲農業高校の江川嵐時キャプテン。
そしてその江川キャプテンのインタビューの間、
静かにじっとその言葉に耳を傾ける大洲農ナイン。
この大役をチームで支えた自負が表情に浮かぶ。
この夏、どこよりも早く「心をひとつに」した自信も伺える。
素晴らしい宣誓だった。
さあ、暑い夏の濃密な時間。
汗を楽しめ! 涙を笑え! 根性に泣け!
そう!順番や組合せなんか関係ない。
普通がなんだ。
とことんやってやれ。
勝機一瞬。
勝負は紙一重。
最後まであきらめずに。
ゲームセットの瞬間まで・・・
野球王国愛媛にとって、夏の高校野球は特別だ。
毎年、この時期になると
100年を超える歴史が現役選手たちを大いに煽る。
またそれを見届けてきた野球の神様や、
勝利の女神や、甲子園の魔物たちも
新たなシナリオ作りに忙しくなる。
1点リードの9回2アウト。
直後、試練の如くレフトスタンドに突き刺さる同点アーチ・・・
9回2アウトランナー無しから
1塁後方に上がったファウルフライを落球。
直後、ライト前、レフト前、そして逆転サヨナラアーチ・・・
夏は激しい季節だ。
特に若者たちには容赦ない。
しかしそれを乗り越えるがむしゃらな姿は、もっと激しく美しい。
ただ、高校野球も時代を映す鏡。
その舞台に登場する選手たちは毎年変わる。
最も変わるのが「選手の気質」だ。
いつの時代にも存在する「今どきの若者」。
そして真っ先に対峙するのが「監督」である。
土を噛むような練習では、
「自信」、「プライド」、そして「夢」さえも時には邪魔になる。
まさに裸の勝負を余儀なくされる。
そうした中、素顔の若者たちが
「規律」と「時間」と「白球」、そして「集団」のうねりの中で
どんな考え方に基づき、どんな動きを見せるか―
今、名将と呼ばれる監督たちが「悩んでいる」。
チーム作りの集大成であるはずの夏を前に・・・。
ある強豪校の監督に話を伺った。
球史に残る名勝負をいくつも経験してきただけに
「指導力」には定評のある監督だ。
しかし、話を伺っていくうちに、
その輝かしい戦歴は、「試行錯誤の歴史」だったことも想像に難くない。
監督は、深く息を吸い、大きく目を開き、
ゆっくりと語り始めた。
*********************************
スポーツを通じて、いかに「人間的に成長するか」。
スポーツをすることによって人間が出来るんだということではなしに、
スポーツをするために自分を変えて、「強く」なっていかないといけない。
そのためには、小さなことを大切に。
「礼に始まって、礼に終わる」という武道の世界ではないですけど。
野球部というのは「グラウンドが道場」だと思ってますので
道場に出たときには、「礼に始まって礼に終わり」、
「相手に対する思いやり」を持ち、
「感謝の気持ち」を感じるようになって欲しい。
そのためには小さなことであり、「返事」とか「挨拶」とか、
自分の部屋のロッカーの「掃除」とか・・・。
どこかの学校で教わったんですけど、
「ゴミをまたぐな」ということを徹底しているんですよ。
またぐということは、
そこにゴミが落ちていることを分かっているわけですから。
「掃除がきちんとできる子は、
送りバントがきちんとできる」ということですね。
なるほどな~ということで、教えを頂いてますので、
そういうことを選手に指導していくのが
やはり監督の役割ではないかなと。
勝敗も大切ですし、野球の技術も大切なんですが、
「1番目には人間形成」、「教育」ということを
自分に言い聞かせながら取り組んでいるところなんですけどね。
*********************************
ここまで一気に、しかも言葉を選びながら
かみ締めるように語ると、
監督はさらにこう続けた。
*********************************
「負けは、みんなで負けた」
「勝ちは、みんなで勝った」
そういうことを皆が思うようになってくれれば、
甲子園に行こうが、行くまいが、
この3年間グラウンドで指導してきた甲斐があると思うんですけどね。
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とっぷりと日が落ちたグラウンド。
かわって照明に灯が点る。
もう逃げも隠れもできない、
真っ向勝負を挑むしかない空気が張り詰め、
また「いつもの声」が拡声器によって漆黒の闇夜に響く・・・
また、ギラギラの夏が始まる。

トウ~リオ~ッ !
・・・と日本中が叫んだ一瞬から巻き戻すこと約30秒!
そこにいたのは長友なんです!
いい目、いい顔しとるな~こいつ!って
解説「安太郎」だけでなく、みんなが思ったはずのその直後、
左サイドを詰めて、コーナーキックをいただき~。
素晴らしい!
中村憲剛のコーナーを成層圏の戦いを制した闘莉王が決めました。
涼しい顔して、長友!豪のDF全員置き去りにしてしまえ~っ。
それにしてもMCG=メルボルン・クリケット・グラウンドは凄いスタジアムだな~。
競技場の外から見上げた時は、中でクリケットやってたけど・・・
フィールド、本当にまんまるなんだ!
2000年 テニスの全豪オープンを見たのがメルボルン。
テニスでもクリケットでもない、
サッカーで盛り上がるメルボルンなんてイメージなかったな・・・
前半終了時点にて。
試合終わりました。
またこいつか・・・・
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